岩井俊二について
※このページに記載した情報は1999年当時のものです。最新情報ではないことをご了承ください。
その履歴
生年月日 1963年1月24日
誕生地 宮城県仙台市
1987年 横浜国立大学教育学部美術学科 卒業
大学時代に自主製作の映画を撮っていたが、卒業後は、CATVのミュージックビデオから映像世界に入ってゆく。
普通、映画監督になるためには「助監督歴何年」という長い道のりを必要とするものだが、岩井はレコード会社に自分の作ったビデオを持ち込んで売り込むという変わった方法で映像の世界へ足を踏み込んだ。
「誰もが群がるところじゃ目立たないけど、違うところから
狼煙を上げれば目立つのでは」
という企みを持っていたという。
そして、そこからテレビドラマ、映画へと岩井の世界はどんどん広がってゆき、音楽プロモーションビデオとCATVの仕事を始める。
その作品歴
88年 初仕事は桑田佳祐のプロモーションビデオ
『いつか何処かで』
89年 CATVで
『アイドル・アクエリアム』という番組を始める。
90年 『アイドル・アクエリアム』の名前を勝手に『世紀末歌姫水族館』に変え、番組自体のCMも作って番組中に流したりする。
91年 関西テレビ・ドラマDOS
『見知らぬ我が子』
で、ドラマの脚本、演出活動を開始する。これはギャラクシー賞正式出品で、ドラマDOS大賞グランプリを受賞してい
る。
同じく、関西テレビ・ドラマDOSで『殺しに来た男』も発表。
92年 後に岩井作品の数々の音楽を担当することとなる麗美(REMEDIOS)のプロモーションビデオやオリジナルビデオなどをはじめとして、サザン・オール・スターズなど数多くのミュージシャンのプロモーションビデオをとっている。
この年は、TVドラマも多く発表している。
『マリア』(関西テレビ・ドラマDOS)
『蟹缶』(フジテレビ・世にも奇妙な物語)
『夏至物語』(関西テレビ・ドラマDOS)
『オムレツ』(フジテレビ・La Cuisine)
『GHOST SOUP』
(フジテレビ・La Cuisine Special)
93年 フジテレビの深夜番組〔La Cuisine〕のスペシャル版で、
『FRIED DRAGON FISH』
を発表。これは後に劇場にて公開されることとなる。
そして夏、8月26日。
『打ち上げ花火、横から見るか?下から見るか?』
フジテレビ〔if もしも〕にて放映される。
これは翌94年の日本映画監督協会新人賞を受賞した。
94年、TVドラマ
『ルナティック・ラブ』(フジテレビ・世にも奇妙な物語)で豊川悦司と出会い、雑誌「ブルータス」から生まれた初の劇場短編作品
『Undo』
を一週間のレイトショー公開するが、宣伝をほとんどしていなかったにもかかわらず、劇場は連日満席という熱狂的支持を得た。
これは、九五年ベルリン映画祭フォーラム部門招待作品であり、ネットパック賞を受賞している。
また、月刊カドカワに小説
『Love Letter』
を連載する。
95年3月には劇場用長編第一作、
『Love Letter』
が公開され、三ヵ月のロングランを記録、数々の映画賞に輝く。
八月には
『Undo』『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』
の短編二作をあらためて劇場公開しヒットする。
96年6月には
『PICNIC』(製作は九四年)
『FRIED DRAGON FISH』
が公開され、前者はベルリン国際映画フォーラム部門に二年連続で出品され、九六年ベルリン新聞読者審査員賞を受賞する。
石井竜也監督作品、映画
『ACRI』
の原作も手懸ける。
九月には劇場長編第二作
『スワロウテイル』
を発表。
音楽担当に小林武史を迎え、主演のCharaをボーカルとした「YEN TOWN BAND」は、映画の中だけのバンドにとどまらず、際にCDデビューを果たし、ヒットする。
『スワロウテイル』は、第十一回高崎映画祭で新人監督大賞を受賞。俳優達も、数々の賞をとっている。劇場公開された『Love Letter』『スワロウテイル』は小説としても出版されている。
立て続けに映画を製作していた岩井俊二だが、過去、『夏至物語』で音楽を使用したことのある、ムーンライダースのミュージッククリップ
『ニットキャップマン』
を製作する。
ムーンライダースの鈴木は、『PICNIC』『Love Letter』『スワロウテイル』などに参加している。
97年、石井竜也監督作品『ACRI』の原作は、小説
『ウォーレスの人魚』
として書き下ろされた。雑誌「ダ・ヴィンチ」に九六年五月号から連載していたエッセイを一冊にまとめた、岩井俊二初のエッセイ集
『トラッシュバスケット・シアター』
も出版される。
また、松たかこのミュージッククリップ
『film 空の鏡』
を製作。
これは、九八年三月十四日に公開の
『四月物語』
の伏線的映像となっている。
制作環境
岩井は、これまでとは異なった手段を用いて映像を作りだしている。それは、小説や絵コンテである。小説という形にしてから、映像の脚本を立ち上げ、岩井本人が描いた絵コンテは台本になるのである。
さらに、岩井は絵コンテを
Power Mac 8100(ミニタワー型)
を使って描き、編集もAVID(ノンリニア編集をするためのシステム)によるという、日本では前人未踏的な方法で映像を作り上げている。
本人は、自分にとっても周りにとっても、理解しやすい、作りやすい、という理由でこの方法を用いているだけなのである。
小説や絵コンテにすれば、岩井が頭に描くイメージというものが、より具体的にかつ正確に伝わる。
周りのもの(スタッフ、俳優など)も、そういった形で表されることにより、岩井のイメージがダイレクトに伝わり、非常に動きやすいという。
AVIDも、デジタル処理した映像と音をコンピューター上で編集でき、従来のビデオ編集などに比べると、手間もかからず、そして、微細な点まで編集できる。
それは、映像にも同様のことが言えるだろう。
ハンディカメラを揺らしての撮影、そして、非常に特徴的なコマ割り、光の使い方などが、これまでのものには見られない特異な印象を我々に与え、ストーリー、音楽などを絡めて、作品自体が独特の空気感や匂いといったものを放っているのである。
引用 及び 参考文献
屋敷由紀恵 著
岩井俊二「スワロウテイル」論
序章 映像作家岩井俊二の誕生